【万年筆一筋71年】
久保氏は昭和4年生まれで今年92歳の誕生日を迎える。
この道71年筆一筋の人生を歩み、万年筆の修理やペン先作成の日々を送っておられます。
【ペン先工場の職人としてスタート】
久保氏は昭和23年、万年筆作りを一生の仕事とすべく静岡から上京し、親戚が経営する葛飾区堀切のペン先工場で独立する昭和55年までペン職人として働き、伝説の万年筆職人としての技術の下地を磨きました。
【独立して久保工業所を立ち上げ】
昭和55年、久保氏は独立して久保工業所を立ち上げ、どこのメーカーにも属さず日本や欧米メーカーの万年筆のペン先の調整や本体を含めた修理を請け負ってこられました。
海外メーカーが日本で万年筆を販売する際、日本人に使いやすくするため久保氏に調整を依頼することも多々あり、久保氏調整済みとパンフレットに書いてあるだけで売れ具合が全く違うそうです。何千本も調整すると疲れますと話され、さすがに最近は依頼をお断りされているとのことです。
【修理・調整実績60万本】
2021年現在、万年筆の修理・調整の実績は60万本に達し、
現存する世界中の同業職人の中で最も多く、世界最高の職人と称されています。
現在も個人からの修理依頼は月に100本ほど請けており、たまにあるテレビ取材・放映後は修理依頼が殺到し忙しそうにされています。
もう年だし、そろそろ修理の依頼を断ろうかと話をされることがありますが、毎日の依頼の電話に、「見てみますので送ってください」と対応される優しさ溢れるお人柄に頭が下がる思いです。
久保氏は前述のとおり70年万年筆一筋の人生で、従来は万年筆のペン先の調整をメーカー等から請け負っていましたが、現在は、個人が所有しメーカーの手に負えないあらゆる年代の万年筆を修理することが仕事の主体になっており、氏の手掛けた万年筆の書きやすさには定評があります。
さらに、万年筆のすべてを知り尽くし、個人レベルで非常に高いクオリティーのペン先を作成することができる世界的にも極めて希少な技術を保有し、まさに神業の持ち主といえる存在です。大手メーカーは大型の動力機械を用いてぺ先を作成しますが、久保氏は創意工夫により小型の電動機材と手動機材により逸品を作り出します。